火星に早く到達することよりも、永く地に足をつけて火星で「暮らす」ことを考える。

SHIRASE EXP.は、厳しい環境で生きる人々の暮らしや、環境と人間とがお互いに命を預け合う関係の姿勢から学び、宇宙の視点から人間社会の在り方を考える、未来へのプロジェクトです。未来を「変える」のではなく、未来と「向き合う」術を、宇宙船から皆さんと一緒に考えてみたい。

 

退役した元南極観測船 “SHIRASE 5002” を、地球から火星へと航海する “宇宙船” と見立て、逃げ場のない閉鎖空間の中で、人間らしい暮らしを維持していく方法を見つけます。


EXP.
EXPEDITION
EXPERIMENT
EXPERIENCE

南極経由、宇宙行き。初代「しらせ」を、宇宙船に。日本で初めての民間による、模擬宇宙生活実験施設が千葉・船橋に誕生します。南極越冬隊のなかで培われてきた生活のための智恵から、宇宙での暮らしを再定義する。そんな実験が始まります。

 

SHIRASE 5002艦内は「宇宙船エリア」と「地球エリア」に隔てられ、宇宙船エリアでは外部との接触は厳しく制限されます。宇宙と地球とを繋ぐのは、六分間のタイムラグがある定時交信だけ。

 

日々の情報が多くなりすぎて、つながりが増えすぎて、全てが便利になりすぎて、本当に大切なことが見えづらくなったこの時代だからこそ、宇宙で暮らす人々が経験するシンプルかつ研ぎ澄まされた「生存への智恵」は、きっと私たちのこれからに役立つヒントがあるはずです。


「当たり前」が、そこに存在している不思議。

地球の当たり前は、宇宙でも同じように当たり前だとは限りません。宇宙服はそれを私たちに気づかせてくれます。

 

普段とちがう指先の感覚で作業をすることがどれだけ大変か。何気ない会話が無線ごしでは成立しないこと。ペンでメモをとることさえままならないこと。当たり前がそこにあることの不思議を発見できたなら、私たちの暮らしはもっと豊かになるでしょう。


「日本らしさ」って何だろう。宇宙を舞台にした文化人類学。

日本人のもつ「曖昧さ」と「事を荒立てずに継続する」文化は、厳しい環境が故に全てを削ぎ落とし、合理性を追求する宇宙のミッションでは、実は大きなアドバンテージです。

 

SHIRASE EXP. を実施する、特定非営利活動法人フィールドアシスタントは、Indonesia Space Science Society(ISSS)と、パートナーシップを締結しています。西洋とは異なる、東洋らしい視点で、宇宙の生活を支えるプロジェクトを提案していきます。


正しくおそれること。極限の環境下で、それを失わない為にすべきことを学ぼう。

“Every single aspect of space is conspiring at every moment to pretty much kill humans.(宇宙の全ての側面は、人間を殺害するためにいかなる時点でも関係している)”インドのある宇宙建築家は、宇宙の環境の厳しさをこう表現しました。

 

また自らを実験台にして、たったゴムボート1隻で大西洋を漂流したフランス人医師・ボンバールは、実に9割以上の海難者が72時間以内に絶望死している現実を「絶望は渇きよりも早く人を殺す。」と云います。

 

時に私たちは、「生きている」ことの定義を、心臓の鼓動が止まらないことだけで考えてしまう事があります。しかし極限の環境の下では、肉体よりも先に人間らしさが崩壊してしまう場合があるのです。

 

「災難によって人は学ぶ」とは、古代ギリシャの作家イソップの言葉です。人間が人間らしく生きることを拒絶される環境で、正しくおそれることを考える。自らの足りなさを知り、足らなさを受け入れ、足らなさと向き合うことを学ぶ。それが私たち本来の持つ、生きる力なのではないでしょうか。